マイストーリー

第7話:経腟分娩で双子のお産

前回の話:
はじめての就職先は、
ハイリスク出産の多い、県外の大学病院でした。

第6話:はじめての就職先は・・ 前回の話: 学生の時、実習先で出会ったあの光景が、おそらくわたしの原点です。 https://karada-kulumi...

 
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双子のお産は、6〜7割が帝王切開です
(もしかしたら、もっと多いかもしれない)

お腹の赤ちゃんの体の向きや体重差などのリスクを考えてのことです。

もちろん、条件がそろえば、双子での経腟分娩は可能です。

ですが、それなりの準備が必要です。

 

わたしが受け持ちをした妊婦さん。
Aさんとします。

彼女は初産婦さんで、
自然妊娠で双子を授かりました。

妊娠経過は順調で、
お腹のあかちゃんの体位も問題なかったので、ご本人の希望もあり、経腟分娩でトライすることになりました。

 

"トライ"というのは、
言葉の通り、挑戦してみるということ。

双子の経腟分娩は、やはり、それなりのリスクがあるからです。

途中で陣痛が弱くなったり、
時間がかかることであかちゃんが苦しくなったり、
1人目が生まれた後、2人目の赤ちゃんにトラブルが起こりやすかったり、
出産後、お母さんの子宮からの出血が止まりにくかったり・・など

ですから、万が一のことを考えながら、お産にのぞみました。

 

万が一のことを考えるというのは、事前にいろいろと準備を整えておくことです。

そのために、
自然に陣痛が来るのを待つのではなく、予定日を決めて、誘発剤を使ってのお産になりました。

また、万が一の時、
すぐに帝王切開で対応ができるよう、手術の準備も同時進行で行う、ダブルセットアップという形で準備をすすめます。

 

出産日当日、
朝早くから陣痛促進剤を使い、午後になって徐々に陣痛が強くなってきたので、Aさんは陣痛室から移動することになりました。

移動先は分娩室ではなく、手術室。

周りには、産科医が数名、
それ以外にも小児科医、麻酔科医、手術室の看護師などなど、大勢のスタッフが待機し、万全の態勢でのお産となりました。

 

初産婦さんということもあり、
1人目の赤ちゃんが出てくるまでに、思っていたより時間がかかってしまいました。

Aさんも緊張と疲れのせいか、
陣痛が弱まり、次第にあかちゃんの心音も落ち始めました。

 
ここまでお産が進むと、
機械から聴こえてくる心音が、1人目の赤ちゃんのものなのか、2人目なのか、判断が難しくなります。

緊迫した瞬間が数回過ぎ、
どうにかこうにか、やっとの思いで、1人目の赤ちゃんが誕生しました。

 

ところが、
2人目はこのままいけるのか?!という危うい状況でした。

状況は緊迫していて、
もう、帝王切開に切り替える寸前まできました。

主治医の先生は、
道具を用意し、Aさんのお腹を消毒しはじめました。(もう、切る直前・・)

 

その時です!!

Aさんが最後の力をふりしぼって、
やってきた大きな陣痛の波にあわせて、ものすごく上手にいきみをかけたのです。

それと同時に、
赤ちゃん自身も、おかあさんのいきみと陣痛にあわせて、骨盤の合間をぬって、みるみるうちに外の世界に出てきました。

それはそれは、
今でも忘れない、ほんとうに見事な光景でした。

 

幸い、その後も、
心配したようなトラブルはなく、あかちゃんはふたりとも元気で、無事、出産を終えることができました。

のちほど、Aさんに
「ほんとにすごかったです。あの時、Aさんががんばったから、ふたりとも、無事に産むことができたんです。すごいです!!」とお話しました。

 
そしたら、Aさんはうれしそうに、

「1人目の時は、周りに"いきんで!いきんで!!"って言われたけど、力の入れ方がぜんぜんわからなくて・・ならったはずの呼吸法もわすれて、すごくあせりました。でも、なんとか1人目が生まれて、すこしだけ冷静になったら、こんな風に力を入れたらいいんだっていうのが、わかったんです!!だから、出来ました。」

と、笑顔で話してくれました。

 

わたしが見ていた、
あかちゃんが回旋しながらスルスルと上手に降りてくる様子を、Aさんは自分の体でしっかり感じていたんです。

本当にすばらしいことだと思いました。

それはおそらく、
Aさんが自分の力で産むことができたと実感できた瞬間だったと思います。

 
わたしも、
双子のお産介助は初めてで、それなりのリスクも承知の上、手術室という慣れない環境で、かなり緊張していました。

正直にいうと、
Aさんにどんな風に声をかけたのか、自分がどんな表情をしていたのかおぼえていません。

そのくらい、必死でした。
(相当、こわばってたんじゃないかな・・)

 
だから、
Aさんが無事、出産を終えることができて、ほんとうにホッとしました。

Aさんのお産を通して感じたことは、
助産師が行う声かけや呼吸の誘導ももちろん大事なのですが、いま、まさにあかちゃんを産もうとしているおかあさん自身が、そのことを自分の身体の感覚として、掴んでいくことが大切なんだと気づかされました。

 
そのためのコツややり方をおしえることはできるけど、
実際に「あぁ、こういうことか。こうすればいいのか!この感覚か!!」と身体の感覚として、腑におとしていくこと。

それは、
あかちゃんを産むおかあさん本人にしかできません。

それが、自分の力で産むということです。

 

この記事をよんでいる方の中には
もしかしたら、これから双子の出産をするか、経膣分娩か帝王切開でお産するか、悩まれている方かもしれません。

勘違いしてほしくないのは、
けして、経膣分娩がいいとか、帝王切開がダメだとか、そういう話ではないということです。

 
たしかに、
Aさんのお産は、書いたとおり感動的なものでした。

ですが、それは、
あかちゃんとおかあさんが元気だったという結果論があっていえること。

仮に、Aさんが、途中で帝王切開になっていたとしても、
手術のあと、そっくりなかわいいふたりの女の子を抱っこしながら、同じ笑顔で話してくれたはずだと思っています。

 

出産方法や育児の仕方への理想やあこがれはあっていい。

そのための工夫や努力は必要。

やってみて、どうしてもその方法が難しくなったら、柔軟に切り替えること。

大事なのは、
自分の希望と、できる限りの努力、そして、安全への配慮、そのバランスなのだと思います。

 

帝王切開でのお産といえば、
わたしが就職してすぐに受け持ちになった、逆子で予定の帝王切開したSさんにはこんなことがありました。

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